探究学習フィールドワーク:「海洋環境 改善の取り組みを知る」

~ 中央⼤学杉並⾼等学校1年⽣/新江ノ島⽔族館・鎌倉海藻ポーク ~

実施場所:中央⼤学杉並⾼等学校
     新江ノ島⽔族館、由⽐ヶ浜海岸、湘南漁業協同組合鎌倉⽀所会議室
実施日時:2026年1⽉7日,8⽇

概要

中央⼤学杉並⾼等学校で3年間を通して取り組まれている『総合的な探究の時間』の最初のフィールドワーク。防災やダイバーシティなど多様なテーマ設定のあるなか、【SDGs14:海の豊かさを守ろう】を切り⼝に『海洋汚染(保全)』を探究しようと2025年度は35名の⽣徒さんが集まりました。 bridge が「海の環境」のパートに参加して今回が3年⽬。初の他団体とのコラボ実施となったお相⼿は、鎌倉市由⽐ヶ浜海岸を中⼼に『鎌倉海藻ポーク』の活動をしている皆さま。海岸に漂着した海藻を集め、綺麗にして養豚の餌に利⽤。育った豚を企業の協⼒を得て、地元鎌倉の『ふるさと納税返礼品』や、飲⾷店・学校給⾷等で提供し、環境課題の啓発活動を⾏なっていらっしゃいます。
海の環境保全に向けた活動には、多様なアプローチがあること、そこに多くの⼈がさまざまな⽴場で関わっていることを知り、それらを参考に、これからの探究活動のなかで、⽣徒さん個々の特性や興味にあったアプローチ⽅法を探っていってほしいと思います。

  • テーマ:SDGs14海の豊かさを守ろう「海洋汚染(保全)」
  • 実施日:事前授業:2026年1⽉7⽇(⽔)12:00〜14:00/フィールドワーク:2026年1⽉8⽇(⽊)10:00〜16:00
  • 体験者:中央大学杉並高等学校1年生 35名
  • ファシリテーター:人見道夫(ネイチャーガイド風の道)
  • 事前学習講師:⼤浦佳代(海と漁の体験研究所)
  • コーディネート:伊東久枝(特定⾮営利活動法⼈ 海の環境教育NPO bridge)
  • 使用教材:
    海洋学習教材LAB to CLASS 《餌の餌の餌は何?〜海の⾷物連鎖》 《藻場のジグソーパズル》
  • 受託元:東武トップツアーズ株式会社 ⽴川⽀店
  • 協力:新江ノ島⽔族館/湘南漁業協同組合鎌倉⽀所/インクルーシブビーチクリーンwith鎌倉海藻ポーク

活動の様子:事前学習

日本の海の多様性を楽しく学ぶ 〜教材体験&レクチャー~

フィールドワークの前⽇に⾏った事前学習では、世界屈指の⽣物多様性を誇る「⽇本の海の豊かさ」、“⾷べる-⾷べられる”でつながる「多様な⽣物の関係」、その「循環の中にある⼈間社会と⾃分の命の存在」…という基本的なことを楽しく伝える『LAB to CLASS』の教材体験をしてもらいました。
その後は翌⽇フィールドワークで訪れる相模湾の⾃然の特徴をスライドで紹介。多様性を誇る⽇本の海になかでも屈指といわれる海が、東京の⽬の前にあること。⽔族館は、最⼤⽔深が1,000mを超えるその海の、波打ち際から深海までを「海中探検」できる場所であることをお伝えし、各グループの探究テーマをもう⼀度振り返ってもらいました。

活動の様子:フィールドワーク①新江ノ島⽔族館

波打ち際から深海まで⽬の前の海「相模湾」に歩いて潜る

真っ平な海⾯が広がる「海」ですが、「新江ノ島⽔族館」前から⽬視できる伊⾖⼤島との間には、じつは⽔深1,000mを超える深海があります。そして江の島の太平洋側は、波によって削られた海蝕棚と急激に深くなる岩礁の世界…。この、陸からは⾒ることができない海中世界が、⼿に取るように⾒られるのが、⽔族館の「⼤⽔槽」です。

⼊⼝の潮溜り(波打ち際)から、スロープを下ると、海⾯に浮かんで⾒るような海の⾵景、洞窟の中の⽣きものの様⼦、そして⽔深10数メートルから⽔⾯を⾒上げる海中世界…。その先には、光や酸素を必要としない深海の「化学合成の⽣態系で⽣きる⽣物の世界」の展⽰があります。中間地点には、午後から訪問をする海洋保全活動と深く関わる「海の森」の展⽰も。これらの多様な環境があるからこそ、相模湾の⾼い⽣物多様性が育まれ、沿岸漁業が盛んなこと。短い時間の観察でしたが、その⼀端を感じてもらえていれば嬉しく思います。

活動の様子:フィールドワーク② 鎌倉海藻ポークの取り組み

「もったいない」から始まった海洋環境保全活動

⽔族館観察の後は、鎌倉駅に程近い「由⽐ヶ浜海岸」で、“海藻”をきっかけに多様な事業者が関わる『インクルーシブビーチクリーンwith 鎌倉海藻ポーク』のお話を伺いました。

海岸に漂着する「海藻」は、本来は海岸に⽣息する⼩さな⽣きものや微⽣物によって消費・分解されてゴミとなることはありません。けれど、観光地である鎌倉ではさまざまな理由から定期的に海岸清掃が⾏われ、海藻も「回収&埋める」という処分がされます。
この処分⽅法に疑問を持ったプロジェクト主催者で料理研究家の⽮野ふき⼦さんが「もったいない」と思ったことから『鎌倉海藻ポーク』の活動は始まりました。海岸で収拾した海藻を丁寧に洗浄・乾燥させ、県内の養豚場で飼料に活⽤。現在では、栄養価の⾼い“ブランド豚”として、地元のホテルや給⾷、『ふるさと納税返礼品』などに、幅広く活⽤されています。

障害者雇⽤・成⼈病予防などの社会課題にも貢献

活動成功の裏には、⽮野さんの想いに⼼を動かされた、地元湘南漁業協同組合鎌倉⽀所の漁師さんたちの理解と協⼒、収拾・選別・洗浄・乾燥…という⼿間のかかる作業を担当する福祉事業所利⽤者の⼈たちの働き、海藻を混ぜた飼料の考案・飼育を⾏う養豚場関係者の努⼒など、多くの⼈の思い、熱意があります。そして気づけば、活動は海洋環境保全だけでなく、共⽣社会の実現や循環型経済の推進など、現代社会が⽬指す持続可能な地域づくりに貢献していました。
SDGsで取り上げられている多様な社会課題は、それだけが単独で存在するのではなく、互いに影響し合う“同じ社会”に存在することを改めて認識したプログラムとなりました。

実施後の感想(実施者:海の環境教育NPO bridge /担当 伊東)

海洋環境問題を学習するとき、最初から問題ばかりに⽬がいくと、その問題の⼤きさや複雑さに押しつぶされて前に進むエネルギーを失ってしまったり、狭義の問題解決に邁進して他への影響や⾃然本来の⼒を⾒逃してしまう危険性があるのではないかと bridge では考えています。まずは海の⽣物に触れ、彼らが暮らす環境のダイナミズムや多様性を感じ、そして学習者⾃らの⽣活・⾏動とのつながりをプラス・マイナス両⾯で学び、そこから“⽣物への共感やつながり“を基盤とした環境保全を考えてもらいたい…そんな思いを込めてプログラムを構成しています。
今回のプログラムでも、⽔族館という慣れ親しんだ場所を海洋保全の視点で⾒ることや、ワカメや豚⾁という⽇々⼝にするものから海を⾒る体験が、海洋課題をより⾝近に、現実味を持って考える⼀助になったのではないかと思います。後⽇⾏われた「探究発表」の場でも、⽔族館の展⽰や飼育⽅法の多様性や⽣きもの視点での感想、鎌倉海藻ポークに関わる⽅々からのメッセージに「諦めないことの⼤切さ」「環境問題と⾝近な⾏動・産業との結びつき」などを挙げているものも多く⾒られ、さらには課題整理や今後のアクション例を挙げているものもあり、今後の探究の進展が楽しみに思われました。


活動の様子の写真、進行表など、より詳しい「実施レポート(PDF)」は、こちらからご覧いただけます