東京湾最⼤の⼲潟で「⽣きもの探し」
実施場所:盤州干潟(千葉県木更津市 金田見立て海岸・小櫃川河口干潟)
実施期間:2023年6月,8月
フィールド探究学習「生物調査&自然体験」
東京都・両国にある中⾼⼀貫校『安⽥学園中学校』1年⽣の『探究学習』授業の⼀環 として、フィールドを活⽤した複合プログラムのサポートをさせていただきました。フィールドは千葉県⽊更津市にある『盤洲(ばんず)⼲潟』。⼩櫃川(おびつがわ)河⼝部から東京湾へと続く広⼤な⼲潟は、“川から海へと繋がる⼲潟の⾃然環境”が残る、全国でも稀な場所です。
この⽣物豊かなフィールドを活⽤して「⼲潟の⽣きもの探し」というテーマ設定のもと、学校での事前・事後学習と連携した、2回の「フィールド探究学習」のサポートをしました。
6 ⽉のフィールド体験では、広⼤な前浜⼲潟に加え、⼩櫃川の川岸に広が河⼝⼲潟も観察。盤州⼲潟の全体像を理解するとともに、事前授業で調べてきた⽣物に実際に触れることで、⼲潟や⽣物への興味を⾼めます。8 ⽉の調査では、総勢200 名という⼈数を⽣かし、1 ⽇⽬にはマス⽬状に区画に分けした⼲潟⾯を班ごとに、時間を区切って「種の調査」。微妙な環境の差によって変わる⽣息種の実態を確認しました。2⽇⽬は班ごとに観察⽣物を決め、異なる2地点で定量調査。⼀定時間に発⾒できた数から⽣息に適した環境を確認し、その特徴を調べました。なかには30分で44個のアカニシ(⼤型の巻⾙)を探し出す班も!
フィールド調査をまとめた『安⽥祭』(⽂化祭)のポスター発表では、⼲潟の⽣物に対するたくさんの驚きや発⾒と、⽣徒それぞれの疑問や考察が描かれ、⽣物に対する興味の芽⽣えをあちこちに感じることができ、半年間の学習成果を感じることができました。
- 実施校:学校法人 安田学園中学校
- 体験者:中学1年生 103名・104名(2回)=総数207名
- 講師・プログラムアドバイザー:東邦大学名誉教授 風呂田利夫氏
- 協力:⾦⽥漁業協同組合、⽊更津市観光協会・観光振興課・環境部環境政策課
- 旅⾏⼿配:株式会社JTB 教育第二事業部
年間スケジュール
活動の様子
事前学習(安⽥学園教室)
探究学習を行うためには、興味を誘発するための基本情報を得ることも大切です。bridge では盤州干潟の概要説明の動画など、事前事後学習教材の提供・作成のサポートをさせていただきました。
事前学習では、フィールドプログラムの講師でもある東邦大学名誉教授 風呂田利夫氏の『干潟の生物観察図鑑』をグループで手分けして読み込み、クラスごとにオリジナル「干潟 生き物図鑑」を作成。さらに、フィールドへの興味を誘引するために、盤州干潟の概要紹介の動画を視聴しました。
盤州⼲潟フィールド体験プログラム:6 ⽉(⽇帰り)
初めての⼲潟体験。まずは資料で⽬にしていた⽣きものたちをたくさん⾒つけて、⼲潟の⾃然体験の⾯⽩さを知ってほしい。特別な⽬標は設定せず、⽣物への興味を誘うことと、⼲潟の⾃然の全体像を理解してもらうことを主⽬的に体験をサポートしました。
初夏の⼲潟は、⿂や⾙などの⽣物はもちろん、フンや卵塊など⽣きものたちの気配がいっぱいです。同⼀に⾒える平坦な⼲潟ですが、岸寄りの早く⽔がひく場所、少し⽔が残る場所、コアマモ(海草)が⽣育する場所などで、⽣きものが異なります。
フィールド探究(調査):8 ⽉(1泊2 ⽇)
(1日目)⼲潟の⽣物調査 Part1:時間内にできるだけ多くの⽣物(種)を⾒つけよう!
まずは盤州干潟全体にどんな生物がいるのかを調べます。班ごとに決められた範囲内で、時間を決めて生物調査。二枚貝、カニ、巻貝…代表種の同定の仕方も勉強してきたので、すぐに分かるはず!と思いきや、実際の生きものは思ったより多様で、種の同定のハードルはなかなか高い。
(1日目)ミニレクチャー:⼤切な「⼆つの⽣物多様性」
フィールド調査後は、⾵呂⽥先⽣のミニレクチャー。午前中に調査した担当地域ごとの⽣物を表に落とすと、前浜(陸付近・浅瀬)〜河⼝⼲潟と環境が変化することで、⾒られる⽣物が異なることがわかりました。
(2日目)⼲潟の⽣物調査 Part2:個別⽣物の⽣息場所を探そう!
調査2⽇⽬は、前⽇に⾒つけた⽣物から興味のある種を班ごとに決めて、⽣息していそうな場所といない場所を予測し、数量&⾏動調査です。<予測・検証>が環境の異なる2地点で⾏われました。フィールド調査の後は、担当の先⽣の指導で「記録と考察」を行いました。
疲れた時は、⼲潟マニアのスタッフがつくった『ミニ⽔族館』でちょっと息抜き。⽣物の多様な⾏動に、あちこちで歓声があがっていました。
ポスター発表:9 ⽉ 安⽥祭(⽂化祭)
安⽥学園中学校では、「⼲潟の⾃然体験」を核として取り組む探究学習の成果を、学園全体の⽂化祭である『安⽥祭』で、ポスター発表という形で展⽰しています。⾒学に⾏くと、イラストや写真を多⽤した⼒がこもったポスターがいっぱい!教室全体に、海をイメージした装飾がなされ、壁や⿊板には⽣徒たちが⾃由に描いた⼤きな⽣物のイラストもあり、フィールドの楽しさがあふれているのがとても印象的でした。
まとめ
フィールド当⽇は6 ⽉も8 ⽉も「猛暑」の中で活動となりましたが、⼲潟を渡る⾵と浅瀬の海に救われて、ほぼ予定通り実施することができました。「種の同定」や「数の計測」など、中学1年⽣には少しハードルの⾼いプログラムですが、「⽬標」があることで⼲潟の⽣物観察への意欲の誘発となり、調査周辺で出会う⽣物への興味へと繋がっていたように思われました。また、研究者の同定に対する姿勢から「感性だけではなく論理的な視点で物事を判断する」という科学的思考に触れる機会ともなったのではないかと思われます。
授業内容の詳細・スケジュール等、より詳しい「実施レポート(PDF)」は、こちらからご覧いただけます